「ビールは最初の1杯!」:限界効用(1)・・(経済学007)

~ 限界効用逓減の原則~

「ビールは最初の1杯!」・・これには誰も反対はしないでしょう・・。でも、どうしてそうなるのでしょうか・・?これを説明するのが「限界効用逓減の原則」であり、この「限界効用」という考え方こそ、ミクロ経済学の根本となっている考え方の一つなのです。

経済学を初歩レベルから”やさしく解説”するシリーズですが、「経済学の目的」「機会費用」に引き続いて、「限界効用」を取り上げます。内容的には”当たり前!”なのですが、その後のミクロ経済学に大きな影響を及ぼした思想です。

限界効用逓減の原則 :
人間が追加的に感じる満足度(効用)は、少しづつ減っていく傾向がある・・。

「限界」という意味:
経済学を難しくしている原因の一つは、そこで使われている(意味が分かり難い)用語です。その中の代表格が、この「限界」という言葉ですが、皆さんは「限界」と聞くと、言葉のとおり「もう、これ以上は無理・・」というイメージではないでしょうか。しかし、経済学で使われる「限界」とは、英語の”marginal”の訳ですから、本来的には「追加で(の)・・」という意味になります。
また、「効用」とは「満足度」のことですから、「限界効用」は「(ある事象に対して)追加的に得られる満足度」という意味になり、決して「満足の”限界”」という意味ではありません。

限界効用曲線:
「限界効用」はグラフで表現され、縦軸に「効用(満足度)」、横軸に「(単位ごとに)追加するモノ」をとります。グラフを見ると、右に行く(追加するモノを増やす)ほど、効用(満足)曲線のカーブが緩やかになっていきます。これは、”同じ量”のモノから得られる満足度は、それが増えるごとに少なくなっていくことを示しており、これが「限界効用逓減の原則」と呼ばれるもので、人間が感じる満足度は何であれこの傾向が見られます。

こんな難しいことを考えるまでもなく、「当たり前と言えば、当たり前」のことですが、経済学はこうした「当たり前」を学問としている点がおもしろいのです。では、この「原則」をどのように自分の生活や仕事に応用していけばいいのでしょうか・・?

ポイントは;
自分が満足を得るために、(何でも同じですが)モノを 使用(投資)する場合、「その”資源”をどういったタイミングでどれくらい使用すれば、最大の満足度を得られるか」を常に考えて判断するということです。なぜなら、資源は有限だからです(希少性原理)。

人間の欲望(満足度)には際限がありませんから、それを絶えず満たすことは不可能です。「限界効用を考える」・・これは言うならば「ほどほどにしときなさい・・」という意味でもあります!

「限界」という思想は、19世紀後半に「限界革命」の名前で、それまでの「古典派経済学」の考え方を大きく変え、「限界需要」や「限界費用(需要)曲線」等々、高度な分野(数学)が生まれ、そこから近代経済学が発展していったという経緯があります。当セミナーにおいては、これらの”学問としての経済”は、別の「シリーズ:ミクロ経済」の中で取り上げていきます。

「経済学の目的」「機会費用」「限界効用」・・これは、経済学に限らず、我々の生活を豊かにする「3点ツール」です。このコンセプトをしっかり理解すれば、あなたの生活はガラッと変わるはずです(私のように・・)。

引き続き「経済学ワールド」を楽しんでください。